ご案内

雑誌をめくっているうちに、T井による世田谷上町の家を気に入ったらしい。 トンガリ屋根の家である。
施主が、土地を探しているとき、偶然この家を発見した。 インターネットを経由せず、実物に触れたのは重要な経験だろう。
そうした因縁もあって、仕事をお願いすることになった。 コンクリートの箱に木の屋根がのるという今回の構成は、世田谷上町の家を継承したものである。
施主は、別荘として木の家をもっており、逆に都市ではコンクリートの家を望んだようだ。 敷地は、四軒の建て売り分譲住宅のひとつだったが、ここだけは条件を解除し、T井に依頼できることになり、購入したという。
T井が現地を訪れ、最初にひらめいた大屋根のイメージは、ほぼそのまま実現したようである。 二階に吹抜けをもつ広いリビング・ダイニング、その上にロフトの空間、プライベートな個室やホームシアターの空間は一階、水まわりはM側に置く。
プレゼンテーションでは、別パターンの模型も提示したが、施主も最初のアイデアを支持したという。 窓や細部にこだわった以外は、スムーズに設計が進行したようである。
施主は、教会のように大きな屋根が好きです、と語ってくれた。 なるほど、長さが約一五メートルに及び、住宅のスケールを超えた巨大な架構といえよう。

ロフトに立つと、天井が頭上に接近し、その迫力に圧倒される。 むきだしになった木の格子が続くさまを眺めていると、モダンなお寺にいるような気分になる。
四周にスリットをめぐらし、屋根はふわりとコンクリートの箱の上に浮く。 ここでは非日常的な構造と日常的な家族の空間が共存する。
最近はセキュリティが過剰に追求される傾向が強いけれども、ホームセキュリティに加入し、物理的に閉じるのではなく、大きな屋根とコンクリートの壁に守られているという精神。 一九九九年に彼が独立してから、二○軒近くが完成しており、個別にテーマを決めながら、コンスタントに住宅を発表している。
メディアへの露出も少なくない。 いまだ仕事が少ない同世代もいることを考えれば、成功しているといえるだろう。
おそらく、人なつっこい本人のキャラクターとも無関係ではない。 住宅作家として確かな感触をつかんでおり、一定のクオリティの作品を提供している。
それぞれに共感できるし、安心して見ること続的に展開する。

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